口の悪い、彼は。
……流されるまま部長のことを求めてしまった私は、恥ずかしさのあまり、唇が離れた瞬間から部長の胸に顔を埋めてしまっていた。
そんな私に対して、部長は何も言わず、私の髪の毛をくるくると指に巻き付けていじっているようだ。
少しくすぐったくて、身体をもじもじと動かしたい衝動に襲われる。
ほんの少し前、そして、今の部長の行動を未だに信じることができなくて、いつ夢が覚めるんだろうと思ってしまう。
……こんなの、夢落ちってパターンだ。
それか……こんなにカッコいいんだもん。
もしかしたら部長はプライベートでは遊んでいる人で……今のもそうだったのかもしれない。
髪の毛が部長の指にピンッと跳ねられる感覚がしたのと同時に、部長の声が耳に入ってくる。
「高橋。そろそろ離れろ」
「!すっ、すみません!ごめんなさい!」
言われた通りに寄りかかっていた部長の胸から離れる。
身体をやわらかく包んでくれていたぬくもりがなくなってしまって、寒い時期でもないのに何となく寒く感じて寂しいと思ってしまう。
私から解放された部長はすっと立ち上がった。
……どうせ夢なら離れなければ良かった。
こんな幸せすぎる夢なんて、この先見ることはできないかもしれないのに。
もし遊びだとしても……少しでも部長に近づけるのなら、それでも良かった。
惜しいことしちゃったかもしれない。
斜め下から見上げた部長の迫力もすごいなぁと思いながら図々しくもそう後悔した時、部長はふと私に視線を落としてきて、たった今言い放った言葉とは反対の行動をしてきた。
「ひぁ!?」
ななな何!?
部長の手が私に伸びてきたと思ったら、私はぐいっと二の腕を引かれて立ち上がらせられ、あっという間に再び部長に抱き締められていた。
その手は私の腰に添えられていて、何だかくすぐったくて、身体の力が抜けそうになる。
恐れ多すぎて確認はできないけど、私の頭には部長の唇が触れているような気がした。
や、やっぱり夢、だ。