口の悪い、彼は。
 

「高橋、ちゃんと状況わかってるよな?」

「……っ、こ、腰が砕けそうなくらい幸せだってことはわかるんですが……これって、夢、ですよね……?それか、遊び……」

「あぁ?何言ってんだよ、お前は。全然わかってねぇじゃねーか」

「!」


何がわかってないの?

「幸せ」なんて言葉を使ったのが間違ってた?

もしかしたら部長は、私の気持ちに区切りを付けさせるためにキスをしてくれたとか……。

……それとも、これは夢でも遊びでもないって言ってるの?

でも、どう考えても……本気、ではないでしょ?

全然わからない!と頭を抱えたくなったけど、このままわからずにいるのは夢だとしても生殺しすぎる。

聞いたら教えてくれるだろうか?と、私は恐る恐る口を開く。


「……は、はい。すみません……。わかってないみたいなので、大変お手数お掛けしますが教えていただけると」


「助かります」と言いながら部長の胸を押してみたけど、離れることはできなかった。

むしろ、力がぎゅっとこもって、そのことにまた私は焦ったけど、声を出さないように必死にこらえる。


「そのざる頭によーく引っ掛けておけ」

「……はい」


何となく怒られるような雰囲気を感じてしまって、私は部長の胸の中で気を引き締めて短い返事をする。

これは部長の機嫌を損ねないために不可欠のことなのだ。

特に私はよく「返事は短くていい!」と言われてしまうから。

 
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