口の悪い、彼は。
「ひっ!?」
背伸びをした状態で身体をびくっと震わせて私は固まってしまった。
何なにナニ……!?
もうみんな帰ってしまったはずなのに……!
私は恐る恐る音のしたドアの方に顔を向ける。
すると、少し驚いた表情をした真野部長が立っていた。
「!!!」
真野部長!?
すぐに怪訝な表情に変化した真野部長の様子に私は慌てて姿勢を正し、ガバッと立ち上がった。
まずいところ見られたかも……!
冷や汗がつーっと背中を流れるのを感じるけど、私は何も言葉にすることができない。
ど、どうしよう……!
「……高橋、残業か?」
「ままま、真野部長!お、お疲れ様ですっ」
「お疲れ。質問に答えろ」
「あっ、すみません……!おっしゃる通りです。残業してました。ま、真野部長は今日は遠方だからって直帰だったんじゃ」
「休みに入るから資料を置きに来たんだ」
「あ、なるほど、です……」
「それより、岡野はどうした」
辺りを見回した後、私の目をじっと見て聞いてくる部長は無表情で、感情のないその表情が何となく怖くて私はつい怯みそうになってしまう。
でも相手はお化けでも鬼でもなく言葉の通じる人間だ。
ちゃんと質問に答えれば怒られることはないはず。
……きっと。
落ち着いて答えろ、私!