口の悪い、彼は。
 

「俺もお前のことが知りたいってことだよ。夢でも遊びでもない」

「……っ」


耳元で感じた脳に響くような低音の声に、私はピクッと身体を震わせてしまう。

……私のことを知りたい?

『“知りたい”って、俺のことが好きってことなんだろ?』

……そう言ったのは部長本人だ。

都合の良すぎる解釈かもしれないけど、私のことを「知りたい」と言う部長は、私のことを好きだと思ってくれていると思ってもいいの?

……本当に?

夢じゃなくて、現実なの?

一気に大きくなってしまった期待に、私は口を開く。


「……あの、部長……、それって、もしかして」

「わかったんなら帰るぞ」

「えぇっ!?言ってくれないんですか!?すすす」


『好き』、って……!

そういうこと、なんだよね!?


「うるせぇな。行くぞ」

「!」


肝心なところを言ってくれない部長は、私の手をぐいっと引いて歩き始めてしまう。

何が何やらわかっていない私は何も言えないまま、部長の大きい背中を見つめながらただその後ろをついていくだけだ。

……この繋がれた手を信じていいのかな?

……部長も、私を想ってくれているって思ってもいいんだよね?

確信は持てないし、彼女の存在を否定してくれたわけでもない。

「好き」という言葉すらないままだけど、今くれたキスとこの手のぬくもりだけで十分だと思ってしまった。

 
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