口の悪い、彼は。
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「……オジャマ、します」
私が今足を踏み入れているのは、部長が生活をしているらしい部屋だ。
本当に私がここに入ってもいいんだろうかと思いながら、部長の後に続いてリビングに入ると、そこには私の部屋のリビングよりも広い空間が広がっていた。
私の部屋は6畳くらいだけど、この部屋は10畳くらいありそうだ。
部屋には存在感のあるブラウンのシックなソファー、シンプルなクッション、四角いガラスが台になったローテーブルの上には雑誌やテレビのリモコンなどが置いてあって、そこにはちゃんと生活感がある。
立方体の箱が6つ重なったような棚には物がごちゃごちゃと詰め込まれているわけではなく、数冊の文庫本や小物がいくつか置いてあって、オシャレですごくいい感じだ。
私の部屋と同じ角部屋だけどその間取りは違っていて、同じマンションだということに少し違和感を覚えてしまった。
ふと目線をリビングの奥に移すと、寝室があり、ベッドのシーツが乱れているのが目に入ってきた。
部長の会社のデスクは仕事量を考えるとかなり綺麗にしてるから、あんな風に乱れてるのって何か意外だ……。
あれって、部長が今朝起きたままってことだよね?
ほわんと部長の寝起き姿を想像してしまって、心臓がドキッと音をたてた。
それを合図に急激に心臓が鼓動を速め始め、バクバクと心臓がうるさく鳴り響く。
“ドキドキ”なんてかわいく音をたてる心臓は一瞬にしてどこかにいってしまったらしい。
って、私、何調子に乗って変なこと想像しちゃってるんだろ。
心臓の音、部長に聞こえてないよね?
聞こえていないことを祈りながら、私は大きく息を吸って慌ててキッチンに目線を移した。