口の悪い、彼は。
「……部長は口は悪いけど、たぶん人のことをちゃんと考えてる人なんだろうなと思ってますよ。……たぶん」
「……」
「それに部長は口は悪いけど、たぶん優しい人なんだろうなって思ってますし。……たぶん」
「……」
「それに……。いつかも私のことを信じてくれて嬉しくて。口は悪いけど、仕事を一緒にする仲間のことを信頼してくれてるからこその言葉なんだろうなとも思いますし。……たぶん」
「……」
「……という感じなので、別に変なイメージなんて持ってません。……たぶん」
「……はぁ。誉められてんのかけなされてんのかわかんねぇな。“たぶん”も多すぎだろ」
「だって……どんなに部長のことを知りたくても、私には予想しかできないですし」
「……ふぅん」
私は部長のことをほとんど何も知らないんだから、“たぶん”が多くなってしまうのは仕方のないことなんだ。
むぅと少しむくれてしまうと、部長からハァと今日何度目かわからない溜め息をこぼす音が耳に入ってきた。
結局怒らせたままになるのかなと思った時。
「こっちに来い」
「わ……っ!ひゃあっ」
伸びてきた部長の手によって私の腕がぐいっと一気に引かれ、バランスを崩すようにしてソファーの上にぼふんと座ってしまう。
驚きと衝撃でつぶってしまった目を開けると、暗い視界の中に部長の顔が飛び込んできた。