口の悪い、彼は。
すぅっと息を吸い込んで、言葉を吐き出す。
「私は……」
「……」
「……私も。……部長が好きです」
「……」
やっと口に出せた気持ちに、私の心臓がドキドキと音をたてる。
好きな人に気持ちを伝えるのはこんなに緊張するものだったんだなと何年かぶりに思い出した。
「……ずっと、好きでした。ずっと、ひゃあっ!?」
噛み締めるようにもう一度気持ちを伝えた瞬間、急に視界が変化する。
……今まで見えていた部長の顔も部屋の光景も、角度が変わって目に映って、私はポカンとしてしまった。
けど、すぐにはっと我に返る。
「……ちょっ、部長!?何してるんですか!?」
「うるせぇな。がたがた言うな」
「だって!」
お姫さま抱っこなんですけど……!
私の身体は部長の腕に簡単に持ち上げられていたのだ。
まるで荷物のように軽々と運ばれ、歩く振動が伝わってくる。
初めてのことに私は落ちないように部長の首に手を回してしがみつくことに必死になるけど、自然と部長との距離が近くなるし、熱が伝わってくるしで、心臓もヒートアップしていく。
そして……その向かう先にあるのは……さっき私の心臓を大きく跳ねさせた、寝室だ。
ちょ、ちょっと待って……!
状況が、状況がっ、読めないんですけどー!?
「部長っ、下ろしてください!」
慌てて部長のスーツの襟元をつかんで、くいくいと引っ張る。
「あ?もう少し待ってろ」
「や、でも!ひゃあ!?」
ぼふんっ、と荒く下ろされた場所は、紛れもなくベッドの上だ。
ゆさゆさとベッドが揺れるのを感じたけど、私の手を押さえつけるようにして部長の指が絡んできて、そのままベッドの上に押さえ付けられ唇が落ちてくる。
「ん……っ」
私の唇を食むように、一気に深くなっていくキスに、私はされるがままだ。
耳に届くのはベッドのきしむ音。
ふたりが重なる音。
荒くなっていく熱い吐息。
甘ったるい声。
そして目に映るのは部長の姿だけ。
……全身で感じるのは、部長のことだけだった。