口の悪い、彼は。
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「……」
「おい」
「……」
「何ぶすくれてんだよ。意味わかんねぇ」
はぁ、とお決まりの溜め息がすぐ隣から聞こえてくるけど、別にぶすくれてるわけじゃないもん、と心の中で呟いておく。
「高橋」
「!」
「腹へってんだろ?早く食え。冷める」
「……」
目の前に並べられているのはトーストとハムエッグと野菜スープ。
パンを焼いた香ばしい香りとスープから漂うコンソメの香りに食欲をそそられ、私のお腹がぐるると小さく鳴いた。
……これらは全部、最初から最後まで、驚くことに部長のお手製らしい。
……つい10分前のこと。
目が覚めたら見たことのない光景が目の前に広がっていた。
カーテンの隙間から入ってくる外からの光の眩しさから逃げるようにシーツをかぶると、ふわっと心地いい匂いに包まれた。
……私、どうしてたんだっけ……?
ここは、どこ?
ぼんやりとする頭で記憶を辿る。
夢と現実が入り交じったような記憶がほわんほわんと少しずつ蘇ってきて、断片を繋げてようやく思い出したのが部長との……だった。
あまりにも甘すぎる時間で、どう考えても現実味がなくて欲求不満からくる夢だったのかもしれないなんて思ってしまうけど、身体のだるさを考えると、あれが現実であることをしっかり物語っていた。