口の悪い、彼は。
美味しすぎるスープの味に感動しながら朝食を完食した後、私は部長が片付けをするのを眺めながら言葉をポンポン投げつけていた。
「部長って何歳なんですか?誕生日は?血液型は?地元は?」
「……」
ちなみに、片付けをしたいという私の申し出は「10万するこの皿、割らずに洗う自信があるのか?」という言葉であっさりと却下されてしまった。
10万のお皿って意味がわからない。
「趣味ってあるんですか?好きな食べ物は?苦手なものは?音楽とか聴いたりしますか?」
「……」
部長の趣向とか知りたいな。
変な趣向が出てくるのはちょっと勘弁だけど。
あとは、これ。
答えによっては嫉妬しちゃいそうだけど、興味があるし……やっぱり聞きたい。
「初恋はいつ、誰ですか?キスするの好きなんですか?いつから私のことを好きだって思ってくれてたんですか?」
「……はぁ。うるせぇ」
答えてくれないなら何でも聞いちゃってもいいよね、と私は調子に乗って質問を引き出していたけど、ついに終わりを迎えてしまったようだ。
まだたくさん聞きたいことあるんだけどな。
「部長が言ったんですよー?何でも教えてくれるって!」
「……“部長”はやめろっつってんだろ。休みくらい休ませろ」
「え、それって名前で呼んで欲しいってことですか?」
「……はぁ。お前は前向きすぎるな」
洗い物を終えたらしい部長は水道の蛇口をきゅっと締め、タオルで手を拭きながら私のいるリビングに向かって歩いてくる。
身長差が20センチはあるから近付かれると完全に見下ろされる形だ。
威圧感は少しあるけど、怒られてるわけじゃないから、別に怖くはない。