The Fool−修正版−
五人の少年は限界へ戻っていた。


限界は朝だった。


皆、それぞれ自分の家に帰っていった。


姿知祈も家に行ったのだが。


「………え………?」


そこには。


「………俺が……もう一人……?」


姿知祈にそっくりな人がいた。


「それじゃ、行ってくるよ。母さん」


『姿知祈』はにこやかに笑いながら玄関を出る。


………誰にも姿知祈の姿は見えていないようだった。


俺はこんなに親に対して元気よく挨拶はしない。と頭を振る。


「俺は普通……無言で学校に行く……のに…」


少し…かなり……目の前の『俺』が気味悪い。と姿知祈は思っていた。


『姿知祈』が通学しているところを姿知祈は後ろから付いていく。


「おはよう、シッチー」


脇の道から女の子の声が聞こえてきた。


姿知祈をシッチーと呼ぶのは弟薔と闇出の男だけだ。


「おはよう。幕内。『いつも通り』だな」


幕内ィィィィ??………いつも通り………??


「もう、こっちは本当は走って来たんだからね!!」


プゥ、と頬を膨らませて『姿知祈』と腕を組む幕内。


姿知祈は何が何やらわからなくなっていた。


普通なら……そう、ここでもう一人、来るはず。


「全く……いいなぁ…ラブラブで」


すると、ちょっとおどおどした真上が遅れて付いてきた。


「真上は、優柔不断を直せば彼女が出来るよ」


優柔不断……?真上が?


姿知祈は更に混乱していった。
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