The Fool−修正版−

追憶の道の脇に咲くは一輪草




「うっふふのふー♪たっのしいわぁ」


私は上機嫌だった。


「ふぅ~何が楽しいだか……」


黒尽くめは呆れている。


私達はその大会がある町に向かっていた。


歩いて半日だから大会には十分間に合う。


「あらぁん言ってなかったかしらぁ?私賞金首よぅ?それが堂々と町を歩けるなんて久しぶりだわぁ」


「お前は何をしでかしたんだ?人を殺してもあまり罪にはならないというのに」


「ん~、ちょっとねぇ。私の生まれたとこってふっる~い習慣ばっかなのよぅ」


「なるほど、禁忌を犯したのか」


この世界は殺人など罪にならない。


力に溺れた人が少なからずいるからだ。


それよりも各町各村で決まっていることを破れば大罪人になってしまう。


「私んとこはぁ自分の決められた場所から外に出ては行けないのよぉ。でもぉすぐ詰まんなくなってぇ守護者倒して外に出たのよぉ」


「ほう…」


「それだけで七桁いく賞金懸けられたのぉ酷い話でしょう?」


「ということはエルフの森出身か」


「そ、私の名前はサリア・ドリアード。これだけ言えばわかるでしょうぉ?」


森の守護精霊ドリアード。


無闇に森を傷つけるものには罰を。


そして自分の好きなタイプが来たらそれを夫とする。


エルフの森はそれで護られている。


黒尽くめは首を傾げ、


「いや、さっぱりわからん」


と、言った。


「け、結構有名なのよん!」


あぁ、また調子狂う。
< 101 / 143 >

この作品をシェア

pagetop