The Fool−修正版−

「マァロー、出てこい」


窓の縁に包帯があった。


包帯はシュルシュルと人型になる。


執事服をどこからか取り出すと瞬時に着替えた。


「何かと騒動になりそうなので」


「すまないな、私が言ったばかりに」


マァローはくすくす笑う。


「まぁ、あまり知らない人達ですので隠れる必要はありませんでしたけどね」


確かにな、とルークも笑う。そして、窓の縁に足をかける。


「どこへ？」


「狩りだ。朝まで帰らない」


「………わかりました」


ルークはマントを羽織り、飛んで行った。


その姿はまるで高貴な吸血鬼のように。


「粋な計らい、感謝しなさいThe Fool」


マァローも部屋から出る。


向かう先は、メル嬢の部屋。


二回ノックし扉ごしにメル嬢に話しかける。


「マァローでございます」


メル嬢はなにも言わない。


「扉には鍵がありますがバルコニーには出入りは自由ですぞ、バルコニーは少し隠れた位置にあります。城の正面に位置するバルコニーですので帰る人達も見えるでしょう」


「……………！」


ミル嬢が小さく息を呑むのを確認したマァローは自分の仕事に戻っていった。