The Fool−修正版−
「………」


燃え盛る業火の中をガリは見渡す。


「………ご苦労だ。ヴィ」


「マダ、シンデイナイヨウダガ」


「……お前ですら、奴らの技で死ぬ」


氷熱ブラザーズと言っているが実際は天気を操るウィタル、チェザリの呼び名は腐渇ブラザーズ。彼の日照りは全てを枯らし、彼女の雨は全てを腐らす。


ワイバーンはがりの言うことを素直に聞き、消える。


「お兄さんが花を散らしちゃった」
「私達が一生懸命育てたのに」


彼らのいる所はすでに炎は枯れ果てていた。


ガリは着地する。


そして、クイクイと手で招き挑発する。


アハハハハと右からウィタルが、ウフフフフフフフと左からチェザリが仕掛ける。


彼らの武器が爪具。ウィタリは右手、チェザリは左手に装着している。


そして、同時に眉間を抉ろうと攻撃する。


ガリは鎌を器用に爪具の間に縫いこませ、引っ掛け、回転する。


「うわ!」
「きゃ!」


当然装着者も回転し吹っ飛ぶ。


彼らを炎の壁が覆う。


地面が変な音を立てながら凹む。


「地中か……馬鹿が」


ベコベコベコと音が早くなる。


そして、回転しながら、爪を天に向けて彼らは飛び出す。


だが、ガリはもう、そこにはいなかった。


「空になった双子の器よ」


彼らは飛んでいるにも関わらず動いているのにも関わらず首が鎌の刃の中に入っていた。


「仲良く、二人同時に逝ける事を幸せに思え」

楽に行けるように、綺麗に、一回限りで、自分が死んだと思えぬほどに。


素早く、武器を引く。


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