The Fool−修正版−

「ん？ああ、こいつら？こいつらはだな………」


男はやっと、気配を察知したのか振り向かずに、コートの中にある手を、広げる。


コウモリの翼のような形となったコートの両の端からは鋭く光る銀色の刃。


一対のナイフで人の二倍くらいある虫の化け物を倒せるか不安だし、男はまだ彼等にとって敵か味方かどうかはわからない。


今さっき、この男は「ああ、こいつらはな………」としか言ってない。


つまり化け物の仲間という可能性もあった。


だが、その可能性はすぐに消えた。


化け物は鎌のような腕を男に向けて振り上げたのだ。


「ここらで一番弱い奴らだよ！！！」


叫んだ男に化け物の腕が落とされる。


その時、男は地面に潜った。


コンクリートの硬い地面に、まるで水に入るように、潜ったのだ。


そして、化け物の背後から飛び出し、化け物を切り刻む。


「−−−っ！姿知祈！後ろ！！」


神疑が叫ぶ。


………え？後ろ？


彼は振り返る。そこには、今、まさに化け物が腕を振り落とす瞬間だった！


姿知祈は眼をつむることしかできなかった。


−チカラが……ほしいか？−


姿知祈の頭の中に誰かが直接語りかける。