The Fool−修正版−
「…………え……?」


―もう、一度言う。力が欲しいか?―


「…………力?」


―そう、力。お前が死ぬのを覆す、力―


「あんたは…誰だ?」


瞼の裏は真っ暗だ。


だが、そこに誰かがいる気がした。


―我はバルドアンデルス。お前の力であり、お前の称号でもある。さぁ、眼を開けろ―


姿知祈は見えないバルトアンデルスの言う通りに眼を開けた。


目の前には巨大な鎌のような腕。


それは本当に目と鼻の先、数十センチ。


そこで止まっていた。


―さぁ、どうする―


「……そんなの決まっているだろう?」


バルドアンデルスは笑う。


―なら、その鎌のような腕をお前の手で防御しろ―


「そんなことしても腕ごとやられそうだぞ?!」


―念じろ。ダイヤモンドのように硬く、と。我はバルドアンデルス、我の名の由来は………―


彼は念じる。俺の腕はダイヤモンドよりも硬い…と。


ガキィィィィィン


少年の腕が化け物の腕を防いだ。


「………なにものでもないもの…………?」


―そうだ、故に………なんでもなれる!!―


< 5 / 143 >

この作品をシェア

pagetop