私の彼は、“キス恐怖症”。《SS更新中
ーーーー放課後PM6:50
『花房さんも、もう卒業だな。』
「そう、ですね。」
言葉が詰まったのは、
その次の言葉に怯えていたから。
『卒業したら結婚しような。』
煙草片手に、そう言う先生。
「うん。」
ーーこの頃の私は、
何も疑うことを知らなかった。
『花房さんが教室に忘れ物を
取りに来なければ、
付き合えてなかっただろうな。』
「あの紙、まだ持ってるんですか?」
『持ってるよ。』
ーーあの日、私が忘れたものは
卒業するまで渡さないはずだった、
先生への手紙だった。
『俺のこと好きだったなんて
びっくりしたよ。』
「……先生、好き。」
『ん、俺も。』
ーー触れるだけのキスが
いつのまにか深くなっていて
私たちは夜の闇に隠れるように
身体を重ねた。