私の彼は、“キス恐怖症”。《SS更新中
(あれ、電話?)
ブブブブという音と共に、手の中で震える携帯を耳に当てる。
「……ナンデスカ。」
《棒読み……。》
「はぁ……あのメールなんなのよ。」
《俺の素直な気持ちだけど?》
「なっ」
低音の甘い声。
電話越しでも格好いいなんて狡い。
《夏織、照れてるでしょ。》
クスクスと可笑しそうに笑う声に、思わずこちらの口元まで緩くなってしまう。
「……いいよ、別に」
《ん?なにがー?》
「晩御飯、私がいいんでしょ?」
たまには、優位に立って隼を動揺させてやりたい。
《……っはは!》
「なんで笑うのよっ」
《いや、可愛いなーって。》
あぁ、やっぱり。
この男は、なかなかに手強い。
《…仕事サボって帰ろっかな。》
「馬鹿。」
《だってそんな可愛い事言われたら
仕事手につきませんよ。》
「…っ仕事頑張って、切るねっ」
通話終了ボタンを押してから、ふー、と口から息を吐き出す。
(早く帰ってきてね、って
言えばよかった…)
少しの後悔。