生えてきた男
 ジョギングコース右手には池がある。

 その縁に50メートル間隔くらいに設けられた、コンクリートで固められただけの、背もたれもない無機質なベンチ。

 俺達が走っているコースから、池側に5メートル程しか離れていない。

 夜間にそこを利用するのは、カップルばかりだった。

 奴らは、俺達に背を向けて、池の方を眺めながらいちゃついている。

 昼間の池は、水鳥達も憩い、太陽に照らされた水面はキラキラと輝いていて見ていても心が和む。

 しかし、夜の水面はただ黒いだけで、何の魅力も感じない。

 奴らは池を眺める為に来たわけではないのだ。

 人気のない公園の、しかも適度に暗い環境で繰り広げられる情事。

 走っていると、その大半がキスをしている。

 中には、女の服の裾から手を入れて、胸を弄っている男もいた。

 そればかりではない。

 時には、女の太股が露になって、その奥へと伸びる男の腕が激しく動いている場面にも出くわす。

 そんな時女は、多少の恥じらいを見せながらも、人から見られている事で欲情していた。

 実際、そんなカップルを覗き見るのが楽しみで走っているスケベ親父もいた。

 くだらん。

 実にくだらん。

 俺は、そういう事に興味は無い。
 
 俺が今、興味を持っているのは・・・

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