鰯雲
元旦の0時

どうせ混みあって繋がらない

かかってくるはずがない


半ば諦めながら……
もしかしたらと思う

落ち着き無く
携帯電話を握り締める



「あの…」


反射的に取った電話の向こうで女の声


!かかってきた?

半信半疑の俺

女は年齢よりも若い声で話した


遠くの汽笛が声に重なる



「あけましておめでとう

船の汽笛が除夜の鐘の代わり


息を弾ませる震えた声

隙間に笑みが見え隠れする


数十分がアッと言う間


「もしかして……外」

「うん、雪が降ってる」


こんな時間に
些細な約束のために……
雪の降る中に佇む女





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