鰯雲
「風邪ひかないように」



今でも……
女のメールで1日が始まる


再び
景色が紅葉に染まり始める
突然
訪れる実感
侘しさと寂しさ


現実だったのか?
思い返す女の声

現実か?
疑うメールの文字


7時……
そろそろ、かかってくる時間



狭すぎず広すぎず整った配列

定刻通りに……
かかってくる女のメール


どこか鰯雲に似ている


笑みがもれた





また
汽笛の音に重なる女の声

聞けるだろうか



妻がゐて子がゐて孤独 鰯雲


ふと
安住敦氏の句が浮かんだ


深まる秋の景色

侘しさ増す冬が訪れる



……「淡く繋がる微かな望み」


拙い下の句をつなげる

ゆっくりと……
煙草をふかす

携帯電話を握りしめる


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