好き✕好き
その瞬間、
――グイッ
「うおっ!」
――……なんて色気のない悲鳴。
「ったく。あぶねーな。なにしてんだよ。美愛」
突然に強い力で引っ張られ横を見たら引っ張ってくれたのは透李君だった。
「とっ、透李君?!」
「なんで、そんな驚くの?……ってか、お前危なすぎ。
素人があんな高いところから滑るんじゃねー。」
「えっ?!素人ってあそこからって先生言ってたじゃん!」
「は?……お前、担任の話し聞いてたか?あそこは上級者が行くコースだ。美愛みたいな運動音痴は初級に決まってんだろ」
な、なんですとっ?!
でもっ!
「捺実ちゃんも、一緒にあそこに行ったよ?捺実ちゃんなら教えてくれるだろーし……」
「はぁ……それは、自分の目でみな。」
え?
透李君が顎で指差す先にいたのはさっきあたしがいたところから華麗に滑り降りてくる捺実ちゃんだった。
長い艷やかな髪をなびかせ滑る捺実ちゃんは女神のよう。
その光景にたしは、あんぐりと口を開けるしかなった。