天才な彼を笑わす方法







「七緒(ななお)さん」

「え?」



七緒―――僕の母さんの名前。

何で宇佐美先輩が母さんを?




「…あんまり大きな声で言えないんだけどね」


宇佐美先輩は、宇佐美をチラ見し、小声で話す。



「前に俺らの母さんも倒れたんだよ。
その時光一は修学旅行で楽しんでいたの。
だから光一には知らせないでおいているの。
光一が責めちゃうから」

「…何を責めるんです?」

「母さんが倒れて苦しんでいる時に、自分は何で遊んでいたんだろうって。
責めちゃうかもしれないから、言わないでおいているの。
先輩も言わないでね」

「…わかりました」



相変わらず、弟思いな兄だ。




「で、母さん倒れた時に、七緒さんに会ったわけ」



なるほど…。



「七緒さんから全部聞いたよ。
先輩が稲村桜と付き合うわけを…ね」

「………」

「どうしたんだお兄様」

「ん?何でもないぞ」



僕はそっと、

目を閉じた。






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