天才な彼を笑わす方法
よく見ると、その服はビリビリに引き裂かれ、顔や腕、足は痣だらけ。
唇の横からは出血もしていた。
僕は無言の桜を引っ張り、公園内にある公衆トイレに入った。
公衆トイレはボロかったけど、雨風はしのげる。
僕は背負っていたリュックサックからティッシュを取り出し、唇の血を拭いた。
小さなハンカチで、髪を拭き、着ていた上着をかけてあげた。
このままじゃ濡れて風邪を引いてしまう。
「…誰?」
ようやく桜は口を開いた。
「瀬川。君の名前は?」
「瀬川…なんて言うの?」
僕の質問をスルーした桜。
僕は仕方なく名乗った。
本当は自分の名前、好きじゃないんだ。
「じゃあなーくんだね」
「なーくんって…」
「…駄目?」
「駄目じゃないよ。
で、君の名前は?」
「稲村桜」
「桜ちゃんの家はどこ?
送ってあげる」
「…家の場所、わかんない」
は?