天才な彼を笑わす方法
ある日。
僕の病室に見知らぬオジサンが入ってきた。
「初めましてだな、瀬川くん。
わたしは桜の父親・幹夫(みきお)だ」
桜ちゃんのお父さん…?
「あの…ごめんなさい」
「何故君が謝るんだ?」
「僕が…桜ちゃんの足を……」
「………」
「傷は必ず残るんですよね?
その傷…僕のせいですよ!
ごめんなさい…僕のせいで…。
僕が自分自身で守ればよかったのに…」
「謝ることはない。
桜も、君を守ることが出来て嬉しいと言っていた」
「桜っ…ちゃ……」
僕は気づけば泣いていた。
桜は僕を守ったことを“嬉しい”と言ってくれた。
それがどうしようもなく…嬉しかったんだ。
「…瀬川くん。
君は、桜を守ることが出来るかね?」
「え…?」
「わたしは土木沢高校で理事長をしておる。
桜もいずれ、誰かと結婚し、その相手に土木沢の理事を継いでほしいと思っておる。
しかし桜は人見知りが激しく、仲の良い男友達などおらん。
そんな桜が初めて興味を持ち、好意を抱いた男…それが君なのだよ。
瀬川くん。
君さえ良ければ、桜を守ってくれないか?」
オジサンの目は必死だった。