天才な彼を笑わす方法







「………」

「勿論桜を守るためには、勉強が必要だ。
予(あらかじ)め君のご両親に、君の成績を聞いた。
君は成績が良いじゃないか。
今以上に努力をすれば、きっと桜を守れる」

「………」




ずっと黙ったままの僕を見たオジサンが、溜息をついた。




「それとも、君のせいで桜は怪我をしたと言うのに、君は桜に何もしてやらないのか?」

「…!?」

「命に関わるほどの大怪我ではない。
しかし桜は今後、足に残る傷のせいで、多くの仲間にからかわれ、辛い毎日を送ることであろうな」

「………」

「その毎日を送ることになる原因は、瀬川くん。
…君にあるのだよ?」

「僕…に……」

「それなのに君は桜を見捨てるのか。
桜は君を守ったと言うのに……」

「………」

「桜に“償い”と言う名の“恩返し”をしようとは思わないのか?」





“償い”と言う名の、“恩返し”……。





「…す」

「ん?」

「やります…。
僕、勉強頑張ります…。
そしていずれは…桜を守ります……」

「…桜も喜ぶだろう」




オジサンは怪しくニヤリと笑った。








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