天才な彼を笑わす方法
「(決断が出たら、そこに電話してほしい)」
男の人が立ちあがる。
…それを僕は引き止めた。
「(…どうした?)」
「………」
「(セガワ?)」
「(…行きます)」
「(え?)」
僕の早い答えに、男の人は驚いていた。
「(僕は、桜を傷つけたんです。
桜を守るためには…こうするしかない…。
日本に、心残りなんて…ありません……)」
「(…後悔しないな?)」
「(はい…)」
「(…では、所長に連絡をする。
決まったとしても、行くのは少なくとも1週間はかかるだろう。
前日ぐらいに連絡をするから、その日までは、思い出作りに励みなさい)」
中学生の僕に、友達がいると思っているのか?
…でも1日中勉強している僕に、友達なんていない。
いるのは、必要になった時に僕を利用する人たちばかりだ。
「お兄ちゃん…」
「…七美、父さんと母さんのこと、任せるな」
「お兄ちゃん…。
最後に、勉強教えて…?」
「…良いよ」
涙を必死にこらえる七美を見ながら、僕は頷いた。