天才な彼を笑わす方法
そして僕は、土木沢高校特進クラスに進学が決まった。
入学式を終え、高校生活が始まると思っていたのに。
アメリカ行きを辞めた僕を、メディアが放っておくわけがなかった。
毎日遅くまである、テレビの収録や雑誌の取材。
芸能人にはなりたくないと誓った瞬間だった。
やっと取材も収録も終わり、通えるようになった。
僕は初めて、土木沢高校の正門をくぐった。
入学式は別のところでやるからね。
「見て…イケメンだわ」
「もしかして、瀬川様じゃないかしら?」
「え?あの天才少年が?」
正門をくぐっただけでこの騒ぎ。
…うるさいと言いたくなるのを我慢し、僕は校舎へ向かう。
すると。
目の前に、僕より背が低い女の子が止まった。
俯いたまま歩いているので、顔は見えない。
てか、俯いたまま歩くなよ。
…危ないなぁ。
歩きスマホが禁止だって呼びかけられているんだから。
俯いたまま歩かないでよ。