天才な彼を笑わす方法
内心大きな溜息を吐きながら、僕は顔を上げた女の子を見た。
赤いリボンをしている。
つまり、特進クラス?
…アレ?
この子…あの人に似ている…気がする。
思わずマジマジ見つめていると。
彼女から話しかけてきた。
チラリと目線が僕のネクタイへ向かったから、多分同じ特進クラスだと判断したんだと思う。
「…失礼します」
彼女はいつまでたっても話さない僕の横を通り過ぎ、校舎へ向かおうとした。
…ちょっと待って。
僕は彼女の行く先を塞いでいた。
さすがに彼女は驚いていた。
僕が彼女に言いたいこと、聞きたいこと。
あの人との関係。
そして、俯いたまま歩くなと言ってやりたかったんだ。
でも、僕は何も言わず、彼女を見つめた。
…するとどこからか、声代わりしていなさそうな高い声が聞こえた。
「せんぱ~~い!」
この声…
「……ウサギ」
前に鳳財閥と宇佐美財閥の合同パーティーで知り合った、宇佐美一光先輩だ。
何故か宇佐美先輩の方が先輩なのに、僕のことを先輩と呼ぶ、風変わりな人。