天才な彼を笑わす方法
8~炎の涙~
☆☆☆
「先輩。せ~ん~ぱ~いっ!」
甲高い宇佐美先輩の声で、僕は目を開けた。
心配そうに、鳳と宇佐美が僕を眺めていた。
「大丈夫ですか瀬川様」
「うなされていたけど?」
僕が?
「…いえ。大丈夫です」
鳳と宇佐美が知るのは、桜と出会う前の僕。
あの頃に戻れたら…良いなと、僕は何度思ったのだろうか?
桜と出会わぬままだったら…僕は“天才”だなんて呼ばれていなかったんだろうなぁ。
僕に向けられる“天才”と言う言葉は、僕のための言葉じゃない。
桜へ向けられる言葉なんだ。
だって僕が“天才”になったのは…桜への“償い”のためなのだから。
桜に出会わなければ、僕へ向けられていたのだろうか?
まぁ…
考えるだけ無駄…ですね。