天才な彼を笑わす方法
この敬語も…。
桜と出会わなければ、年上だけにしか使わなかっただろう。
僕は勉強ばかりしていた。
ただ…“償い”のためだけに。
毎日のように来るテレビ出演や雑誌の取材、宮野教授を初めとする教授への挨拶。
同い年の子とは関わらなかった僕は、大人とばかり関わり、いつしか誰に対しても敬語になったんだ。
タメ口がどんなものか…忘れてしまったんだと思う。
償い、償い、償い。
僕の頭にあったのはこれだけ。
それ以外は、何もない。
でも…
宮野は変えてくれたんだ。
親子で。
宮野教授は初めて僕の中身に気が付いてくれた。
宮野には素を出せた…気がする。
ごめんね桜。
僕のせいなのに。
前を向いて、
桜も歩いてごらんよ。