天才な彼を笑わす方法
「先輩大丈夫ですか?
顔色悪いですけど。
また夜遅くまで勉強ですか?」
「………」
「カナコちゃんがいると思われる場所に着きましたよ」
「そうですか…。
じゃ、僕も行きますね……」
立ち上がった途端、軽い眩暈がした。
すぐに宇佐美先輩が気が付き、倒れる寸前の僕を支えた。
「大丈夫?
具合悪いならいて良いですよ」
「そうですわ。
倒れたら大変ですもの」
「お兄様が良いこと言っているんだから」
…今、宇佐美、宇佐美先輩のことけなしたよな?
…まぁ良いや、宇佐美先輩気が付いていないし。
「いや…僕行きます。
全ての発端は…僕ですから。
僕が決着つけてこないと…いけませんから」
多少眩暈が残るけど、バレないよう立ち上がる。
宇佐美先輩が、心配そうな顔をしていたけど、頷いた。
「俺らはココにいる。
瀬川、気を付けて行ってこいよ」
「…はい」
鳳の車から降りると、そこは小さな倉庫らしきもの。
僕は中へ入る。
「そういえば一光お兄様。
聞きたいことがあるんですけど」
「何だい?
可愛い和歌奈ちゃんの聞きたいことなら、何でも答えるよ」
「お兄様?」
「…光一、その笑顔怖い」
「…。
瀬川様の下のお名前、ご存知ですか?」
「え?
…アレ?そういえばなんだっけ?」
「あたしの聞きたいことなら何でも答えると言ったの、嘘ですか」
「嘘じゃないんだけど…。
先輩、確かお父さんが響(ひびき)で、お母さんが七緒で、妹さんが七美だとは知っているんだけど…。
確かに先輩、下の名前、何で言うんだろう……?」
「稲村桜は瀬川を“なーくん”と呼ぶよな?
つまり“な”から始まる名前なんじゃないか?」
「さすがはコウちゃん!
一光お兄様とは大違いですわ!!」
「和歌奈ちゃん…」