天才な彼を笑わす方法
瀬川が勉強するのも、桜ちゃんの傷があるから。
瀬川が天才と呼ばれるのも、桜ちゃんの傷があるから。
瀬川が桜ちゃんを守ると言ったのも、桜ちゃんの傷がなければ言えない。
全て、
桜ちゃんの傷がなければ、
成り立たない話なんだ……。
桜ちゃんを、
愛していたわけじゃない…。
瀬川の言う「愛している」の中には、
同情や償いが含まれているからこそ、言えるんだ…。
でも、桜ちゃんの言う「愛している」は、
ただ純粋な、真っ直ぐな恋心が言わせただけ…。
同じ「愛している」でも、
意味は全く異なるんだ……。
「あたしはっ、なーくんが好き!
誰にも…なーくんをあげたくないっ。
なーくんだけ信じて…なーくんだけ…愛したい……」
シュッとマッチ棒と箱をこすり合わせた桜ちゃん。
「桜ちゃんっ!駄目ェ!!」
私の叫びは届かず、
桜ちゃんは、
燃えるマッチ棒を、
―――床へ投げた。