天才な彼を笑わす方法
車は速度を上げながら、病院へ続く道を進んでいく。
「…カナコちゃん」
「どうしたの桜ちゃん」
「……ごめんなさい」
桜ちゃんは、俯いたまま言った。
「桜ちゃん…?」
「あたしのせいで…なーくんが……」
桜ちゃんの着る制服のスカートに、ポタポタと、涙らしき液体が染み込んでいく。
「あたしがこんなことしなければ…なーくんが倒れることも…なかったんだ……。
あたしが…あたしが……」
嗚咽を漏らしながら泣く桜ちゃん。
私はそれを見て、少し笑う。
「瀬川とお互い様だね」
「え?」
「だって、今桜ちゃん“あたしのせいで”って泣いているでしょ?
瀬川だって、桜ちゃんに傷を負わせた“償い”のために、勉強して天才と呼ばれるまでに成長したんでしょ。
同じだね、瀬川と」
「なーくん…あたしのせいで……」
「そろそろ、瀬川を解放してあげて。
瀬川を…“償い”と言う名の鎖から」
後ろからプッと吹き出す宇佐美先輩の声が聞こえる。
私は後ろを見て小さく睨んだ。