天才な彼を笑わす方法








「何故鳳が俺に対して様を付けるか知っているか?」

「えっと確か。
お父さんに付けろって言われた…だっけ?」

「ああそうだ。
俺は誰からも様付けで呼ばれ、どんなに偉い人でも道を開けるんだ。
そんな生活、お前はどう思う?」

「私は…嫌かな。
凄く窮屈そうだもん…」

「その通りだ。
ただし、お前は違った」

「私?」

「宮野は俺に対して、敬語は使わねぇし、宇佐美に対してはくん付けなのに、俺に対しては呼び捨て。
その上俺を遠足の時は振り回して…。
…宮野だけだよ、俺を“瀬川七音”として見たのは」




ふっと寂しそうな笑みを見せる瀬川。

“償い”のために作られた“天才”にも、辛いことがあったんだ…。



…いや、違う。

“天才”だからこそ上手く辛さを隠せるし、

“天才”だからこそ、誰も見てくれなかったんだ。




「…ありがとう、宮野」






ふっと、







―――七音は笑った。








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