天才な彼を笑わす方法






―――しかし。




「あれ?開かねぇな」

「え?」



固い鉄の扉が、押しても引いても開かない。



「閉じ込められたんですの!?」

「…かもな」



地下倉庫は、滅多に人の通らない場所にあり、このまま気が付かれないまま朝を迎えたって話、執事長から聞いたことありますわ…。




「ウゥ…ヒックヒック」

「本当泣き虫お嬢サマだな」



そう言う彼も、目尻に涙を浮かべていた。



「あたしが泣き虫お嬢サマなら、あなたは泣き虫お坊ちゃまですわね」

「お、オレは泣き虫じゃねぇよ」



それは彼なりの、精一杯の強がりでした。

今にも大声を上げて泣きそうな表情を浮かべる彼。

あたしよりも泣き虫ですわ。



「寒いですわ…」



何だか先ほどより、温度が低くなった気がしますわ。



「温度上げるか。待ってろ」



待ってろ言われましたけど、あたしは彼について行った。

1人になると、何だか本気で泣きそうでしたから。






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