天才な彼を笑わす方法
温度を調節する機械はすぐに見つかりましたわ。
でも、その機械は高い所にあり、背の低い方だったあたしたちでは届かなかった。
「…コレ着てろ」
「ありがとうですわ…」
子ども用タキシードのジャケットを貸してくれた彼。
夏用で生地は薄いですけど、彼のぬくもりが残っていて、あたしはいつの間にか安心していた。
「そういえばお前、名前は?」
「鳳和歌奈ですわ」
「オオトリワカナ…。
いかにもお嬢サマな名前だな」
「あなたは名前、何て言うんですの?
コウと呼ばれていましたけど」
「宇佐美光一」
「では、コウちゃんですわね」
「は?
何でちゃん付けなんだよ。
オレ女じゃないんだけど?」
「コウちゃんってあだ名、可愛くないですか?」
「……まぁ悪くねぇな」
「素直じゃないですわね」
あたしたちは笑いあう。
「そういえば、先ほど、コウちゃんがお父様と会話しているの、聞いてしまいましたわ」
「…ふーん」
「コウちゃん、お兄様いるんですの?」
「まあな。
今日お兄様、風邪引いたから、パーティーには欠席だけど」
「そうなんですの」
その時、コウちゃんが寂しそうな顔をしたのを、あたしは見逃さなかった。