天才な彼を笑わす方法






「そんなのっ…偶然ですわ。
コウちゃんが殺したんじゃないですわ。
運命には、誰にも逆らえないですわ!」

「運命って…。
お嬢サマ、難しい言葉知ってんじゃん」

「お嬢サマじゃないですわ。
あたしは鳳和歌奈ですわ」

「お嬢サマはお嬢サマで良いの」



ハハッと力なく笑ったコウちゃんは、再び話し出す。



「オレ、お兄様より優秀みたいでさ。
周りからも、宇佐美を継ぐのはお兄様じゃなくてオレだって言われてる。
お兄様…辛いと思うんだ。
弟の方が優秀とか言われてさ…。

でも、オレ知っているんだ。
お父様が思う、本当に宇佐美を継いでほしいのはお兄様。
お父様だって、本当はオレを許しきれていないんだよ。
お父様の愛したお母様を殺したオレを…。

お父様が言うのは、いつもお兄様ばかり。
お兄様には、オレより優秀に何故なれないって言うけど、オレにはお兄様の気持ちをわかってあげろって言う。
お父様が本当に期待しているのはお兄様なんだよ。

オレが鳳に婿養子になれば、宇佐美はお兄様が継げるだろ?
だから、お父様はお嬢サマに、オレを紹介したんだよ」



…コウちゃん……。




「ごめんね。
オレ、ひねくれているから。
お兄様みたいに、お嬢サマに優しく出来ない」




ガツッといきなりあたしの肩を乱暴に掴んだコウちゃんは、あたしを床へ押し倒した。

背中に、ひんやりした床の感触がある。




「コウちゃん…」

「オレだってね、宇佐美継ぎたいんだよ。
オレ、好きな人…いるし」

「え?」






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