天才な彼を笑わす方法







「せ、瀬川様」



お父様から瀬川様と呼ぶよう言われていたので、そう呼びかけた。

先輩は、チラリと俺を見たが、すぐに目線を本へと移してしまった。



「瀬川様?」

「………」

「僕は宇佐美一光です」

「………」

「瀬川様に会いたいと思っていました」

「………」

「瀬川様のこと、毎回テレビで拝見しておりました。
お会いできて光栄でございます」

「……いくつですか?」

「え?」



突然話しかけられ、驚きながらも「高1です」と答える。



「…なら、僕に敬語使わなくても良いですよね?」

「…」

「何で僕に敬語使うんです?
普通使うのは、年下である僕の方ですよね」

「…瀬川様、だから……」



素直に言うと、先輩は黙ってしまった。



「お、お気を悪くしましたか?
なら申し訳ありません、先輩」

「……先輩?」

「はい。
瀬川様は、僕の先輩です」



先輩は本から目を離し、不思議そうな視線を俺に向けた。






< 52 / 190 >

この作品をシェア

pagetop