天才な彼を笑わす方法
「せ、瀬川様」
お父様から瀬川様と呼ぶよう言われていたので、そう呼びかけた。
先輩は、チラリと俺を見たが、すぐに目線を本へと移してしまった。
「瀬川様?」
「………」
「僕は宇佐美一光です」
「………」
「瀬川様に会いたいと思っていました」
「………」
「瀬川様のこと、毎回テレビで拝見しておりました。
お会いできて光栄でございます」
「……いくつですか?」
「え?」
突然話しかけられ、驚きながらも「高1です」と答える。
「…なら、僕に敬語使わなくても良いですよね?」
「…」
「何で僕に敬語使うんです?
普通使うのは、年下である僕の方ですよね」
「…瀬川様、だから……」
素直に言うと、先輩は黙ってしまった。
「お、お気を悪くしましたか?
なら申し訳ありません、先輩」
「……先輩?」
「はい。
瀬川様は、僕の先輩です」
先輩は本から目を離し、不思議そうな視線を俺に向けた。