天才な彼を笑わす方法
「僕は、常に弟と比べられていたんです。
両親も、親戚も、弟の方が優秀だって騒いで。
1度、宇佐美の名を捨てて、新しい人生を送ろうと思ったほどです。
そんな時、諦めない勇気をくれたのが、先輩です。
瀬川様は、先輩は、僕の人生の先輩なんです」
先輩はメディアに出ても緊張せず、淡々と受け応えしていた。
どんな相手にも、変わらない態度で。
それが羨ましかったんだ。
だってそれこそが俺の出来ないことだったから。
誰に対しても明るく接することのできる光一は、誰からも好かれた。
しかし俺は人見知りが激しく、心を許した相手としか話すことが出来なかった。
それが1番、俺が弟と比べられていたことだった。
「僕も、いや…俺も、先輩を見習って、受け応えを上手く出来るよう頑張ります」
先輩は小さく「そうですか」と呟くと、再び目線を本へ移した。
「先輩。俺のこと何て呼んでくれますか?」
「…ウサギ」
「え?
俺宇佐美ですけど」
「ウサギの方が呼びやすいですから」
「…何それ」
アハハッと俺は素直に笑う。
誰に対しても偽りの笑顔しか見せられなかったけど。
先輩に出会って、俺は変われたんだ。
だから俺はこれからも、
先輩と呼び続けたい。