天才な彼を笑わす方法
「ここです。楽器保管室」
「ありがとう!」
埃っぽい部屋の中へ入る。
元々は空き教室だったみたいで、黒板や古い机などが端に無造作に置かれていた。
大きな棚の中から、バイオリンケースを取り出す。
「ありがとう、助かったわ。
でも、ちゃんと授業に出なくちゃ駄目よ」
「せ、先輩みたいに言いますね。
何年生ですか?」
「私1年生よ」
「あ、あたしもです!
同い年だったんですね~」
同い年とその子は笑うけど。
…中学生ですって言われても納得いくような背の低さだな。
私155センチで小さい方だけど、この子150センチぐらいじゃないか?
「あたし稲村桜(いなむら・さくら)です。
普通クラス1年2組です」
「私は宮野叶子。
特進クラス1年生」
桜ちゃんの名前を聞いて、ふと思う。
そういえば理事長の名字、稲村だったな。
桜ちゃん、本当に理事長の娘なんだ…。
「桜ちゃん。
ちゃんと授業受けないと駄目だよ」
「はいっ」
桜ちゃんと出会った場所で別れ、
私は音楽室へ戻った。