天才な彼を笑わす方法
☆カナコside☆
「…遅かったですね」
音楽室の席は教室と同じなので、私と瀬川の席は隣。
「ちょっと道に迷っちゃってね」
「…そうですか」
「でも、親切な子に出会って、教えてもらったの」
「………」
「黒髪の子でね。
ここの理事長の娘さんなんだって」
ガチャンッ!
机の隅に置いてあった瀬川の筆箱が、音を立てて落ちた。
クラスメイトや先生の視線が、一斉に瀬川へ注がれる。
「せが、わ…?」
「………」
「大丈夫…?」
「…大丈夫です」
さっさと散らばったシャーペン類をしまった瀬川は、何事もなかったかのように、席へ座り、いつも通り授業を受け始めたのであった。
本当に、
謎な人だなぁ……。