月夜の影3
いつまでも起きない千秋より一足先に星野学園に向かった。

登校時間なのに、一部屋だけ、人気がある。

阿月の部屋だった。

阿月は椅子に座り、壁を見つめていた。

「阿月、おはよう」

もちろん返事はない。

「学校行かないの?」

返事が来るなんて思わずに健也は話しかける。
阿月が星野学園に来て一か月。
しかし、まだ阿月の声は聞いていない。
ほかの職員も聞いたことがない。

「今日は雨だね」

健也は窓の外を見た。



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