月夜の影3
「雨はね、寂しい気持ちになるけど、人の心の傷を癒してくれるんだよ」

しとしとと雨は降り続く。
窓に雫が伝っていく。

「俺もね、つらいことたくさんあった。
大事な家族もなくしたし、たくさん泣いた。
だけどね、雨を見ると自然と心が静かになったんだ。
俺もたくさん泣いたけど、神様も泣いてくれてる、って。
神様の涙はね、人が未来に向かって歩ける力をくれるんだよ」

阿月は一瞬だけ健也のほうを見ようとした。

「だから雨の日はいいんだよ、泣いても。
泣いた分だけ神様の涙で洗い流してくれるから」

健也は部屋を出て行った。





しばらくそっとしておく、それが健也のやり方だ。

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