悪魔の誘惑【BL】
Holly Night 2014
『──辻村く~ん。今晩泊めて欲しいんだけど』
本日12月24日。
辻村慈人(つじむらちかひと)はイヴの夜を独り淋しく自宅で過ごしていた。
夕食を終え、のんびりテレビを見ていると不意に携帯が鳴ったのだった。
慈人が何気なく出ると、情け無い声で大学の友人である坂下烓吾(さかしたけいご)が泣き付いてきた。
「イヤだ。鳥羽か佐藤んとこ行けよ」
坂下がそんな事を言う時は大抵色恋沙汰が絡んでいる。
独りで居るとはいえ、こんな日に振られたヤケ酒に付き合わされるのはまっぴらごめんだ。
『鳥羽くんちは遠いし、佐藤は説教するから会いたくないんだよ!』
「そんなんお前の自業自得だろー?」
『そんな事言わないで早く開けてよぉ〜』
「は?」
『今、辻村くんちの前なんさぁ』
「恐怖電話みてぇなことすんなよ」
はぁ、と溜息を吐いて慈人が仕方なく玄関を開けると、コンビニ袋を下げた坂下が「辻村く~ん」と猫なで声で抱きついて来た。
坂下は既に飲んでいるようでかなり酒臭い。
再び溜息を吐いた慈人は、坂下を引き剥がしながら渋々部屋に招き入れた。
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