それが愛ならかまわない

「あれ?」


 正面に眉を顰めた椎名の顔。その背景は白いシーツ。


「気をつけろよ」


 掴んだのは椎名の腕だったらしい。渾身の力で引っ張ったせいかベッドに倒れ込んだ椎名と、その上に斜めに覆い被さる私。結果的に押し倒したような体勢になっていた。


「……ごめん」


 ダメだ、今日の私はおかしい。
 人前でこんな不注意で転ぶなんて普段は絶対ないのに。そして寝起きの椎名が妙な色気を振りまいているからって、至近距離で合ったその眼に一瞬ドキッとしたなんて。
 自分のペースを乱され過ぎだ。


「時間あるからって誘ってんの」


「え?……うわっ」


 椎名の視線を辿ると、転んだせいでバスローブが派手に肌蹴ていた。慌てて直して起き上がる。
見えた。絶対見えた。
 やっぱりバスローブじゃなくて服を着ておけば良かった。
 まあ昨夜散々触られてるし。体重とサイズの管理はしっかりしてるつもりだし。見られてもどうって事ないかもしれないけれど、こんな明るい所で堂々と披露したい物でもない。

< 10 / 290 >

この作品をシェア

pagetop