それが愛ならかまわない

「うん、一緒に行こうか」


 一階の非常階段横にキヲスク程度の売店がある。定時前には閉店になってしまうけれど、コンビニまで行かずともある程度のドリンクに飴やガム、スナック菓子やカップラーメンくらいならここで手に入るので社員の利用率は高い。


「ありがとね」


「え?」


「買物。重そうだと思ってついて来てくれたんでしょ?」


 非常階段をヒールの音をさせて下りながら言うと、溝口さんは照れ臭そうに笑った。


「だって私が一番新人ですから」


「そんなの気にしなくていいのに」


 安田君じゃなくてもこういうタイプを恋人にと望む男は多そうだ。実はもう水面下で争奪戦が始まっているかもしれない。今度そういう事にやたら詳しくて情報が早い長嶺さんに聞いてみよう。

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