それが愛ならかまわない
「ええ、まあ」
早くその手をどけて欲しい。声かけるだけならともかくなんて触る必要があるんだ。そう思うけれど邪険に払いのける訳にもいかない。ペットボトルやお菓子を抱えている状態なのでさり気なく離れる事も難しかった。相変わらず整髪料の匂いがキツい。
溝口さんは困った様に笑顔を浮かべている。せめて彼女だけでも何とか離してあげたいけれど上手いやり方が思い浮かばない。
「お金は僕が出すから君達も自分の分を選びなさい」
「え?でも……」
「最近の法ソリは皆頑張ってくれてるからねえ。篠塚君のお陰で新規契約増えてるらしいし、そっちの……溝口君もよく出来るって評判だよ」
「……ありがとうございます……」
手が背中から肩に回ってポンポンと叩かれる。私と溝口さんは両腕に抱き抱えられる様な体勢になって、まるでキャバクラだ。いい加減離してってば。
この人に褒められても今ひとつ嬉しくない。それに部署としての業績が伸びてるなら売店のお茶やお菓子なんかじゃなくもっと別の事で還元して欲しい。さっきまで高揚していた気持ちが一気に萎えていくのが自分でも分かった。代わりに不快指数がどんどん上がって行く。
たまにははっきり言ってやろうかと小さく息を吸い込んだ時だった。