それが愛ならかまわない
「すみません、今日は予定があるので遠慮しておきます。また誘って下さい」
「なんだ最近付き合い悪いなあ。もしかして既に新しい男がいるとか」
「そんな色気のある話じゃないですよ。友達と約束があるんで」
部長の言う通り、最近バイトを詰め込み過ぎるあまり社内の人間との付き合いがおざなりになっているのは確かだった。
一日でも早く完済したい気持ちは変わらないけれど、上司とのパイプもしっかり繋いでおいて社内の情報に疎くなるのは避けたい。井出島部長にも立岡さんにも可愛がってもらっているし、酒の席に気楽に付き合える貴重な人材だ。先の事を考えたらもう少しバランスを取る必要があるかもしれなかった。石渡君に言われた同期会もどうにかして予定を調整しよう。
そんな事を考えながらスマホを開くと、珍しいアドレスからメールが届いていた。
久しぶり、で始まるメールは文字通りしばらく会っていない大学のサークル仲間の同級生からだ。
サークルで一緒だったメンバーは誰もが私と北見先輩が付き合っていたことを知っている。ただ別れた後のゴタゴタは当時誰にも言わなかった。あれこれ説明するのはもちろん知られるのも嫌で、その結果当時の知り合いとは完全に疎遠になっていた。
『莉子久しぶりー。元気かな?引退してから音沙汰無いけど今って何してんの?この間OB・OG会の時に北見先輩から莉子の事聞かれたよ。卒業前に別れたみたいだけど最近ちらっと会ったって言ってたし、もしかして再会ラブとかあったりする?また近況教えてねー』