それが愛ならかまわない

 トイレで化粧と髪を簡単に直し、鏡の前でため息をついているとそのタイミングで溝口さんがトイレに入って来た。


「あ、コーヒー机の上に置いときました。篠塚さん砂糖なしのミルクですよね」


「うん、ありがとう」


「あのっ、篠塚さん!」


 席に戻るつもりでそのままトイレを出ようとしたら、溝口さんに呼び止められた。
 少し躊躇うようにそこで言葉を切った彼女の耳の縁が少し赤い。


「業務時間内に聞く事じゃないんですけど……篠塚さんって椎名さんと同期ですよね」


 ある程度覚悟はしていたつもりだったけど、溝口さんの口から椎名の名前が出て身体がビクッと硬直する。それでも顔だけは何でもない風を装って聞き返した。


「一応そうだけど……どうかした?」


「あの……その、椎名さんって付き合ってる人いるかどうかって知ってたりしますか……?」


 言いながら溝口さんは耳どころか顔までしっかり赤くなってしまっている。


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