それが愛ならかまわない

 そう言えばその可能性は考えた事がなかった。始まりがあれだった事もあるし、長嶺さんや石渡君がそれらしき事を匂わせたりはしなかったせいもある。本人もそんな事は言ってなかったし。けれどその気になれば椎名は例え恋人がいても会社の人間には完璧に隠し通す事くらい出来そうだった。もし付き合ってる相手がいるなら私との行為は彼女への裏切りだけれど、それを平気で出来るタイプかどうかなのかまでは希望的観測なしでは断定出来ない。


「んー、ごめん。私は部署も違うしそこまで親しい訳じゃないから分からないや」


「そうですか……ごめんなさい、変な事聞いちゃって」


 実際私自身にも分からないのだから間違った事は言ってない。けれど手持ちの情報全てを開示は出来ないせいか、少しだけどこか後ろめたい気持ちが残る。


「溝口さん、椎名君の事格好良いって言ってたもんね。……本気になっちゃった?」


「システムトラブルの時助けてもらったりとか、この間の売店の事とか……ダメですよね。私、困ってる時にちょっと優しくされると弱いんです」


 溝口さんが髪をいじりながら苦笑いを浮かべる。


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